資金調達の手段として日本でも活用が増えてきたクラウドファンディングですが、デメリットを語られることは多くありません。
そこで本記事では、クラウドファンディングの種類とデメリット、リスクについて解説します。
デメリットを理解することで、クラウドファンディングを上手に活用できるので、ぜひ参考にしてみてください。
- クラウドファンディングは種類ごとに用途やデメリット・リスクが異なる
- 融資型(ソーシャルレンディング)の投資先は怪しい企業も多数あり、金融庁が注意喚起している
- クラウドファンディングを上手く活用できれば、デメリットを上回るメリットを得られる
クラウドファンディングは大勢の人から資金を調達すること
クラウドファンディングとは、インターネットを活用して大勢の人から少額ずつ支援を集める資金調達方法のことです。
起案者は専用のプラットフォームを利用し支援を呼びかけ、支援者は成功を期待して資金を提供し、その見返りとして商品やサービスなどのリターンを受け取るのが一般的なやり方です。
資金調達といえば、銀行融資やエンジェル投資、ベンチャーキャピタルなどで出資を募ることがありますが、どれも容易ではありません。
それらに比べてクラウドファンディングは気軽に始められ、事業資金だけでなく個人の生活費を支援するプロジェクトもあるほどです。ただしプロジェクトの成功には、クラウドファンディングの種類やデメリットを理解しておくことが重要なので、それらを解説していきます。
クラウドファンディングの基本形3種類
クラウドファンディングにはいくつかの方式があり、資金の調達方法や起案者から支援者へのリターンの仕組みなどが異なります。
基本となるのは下記3種類です。
- 購入型クラウドファンディング
- 寄付型クラウドファンディング
- 融資(投資)型クラウドファンディング
それぞれの違いを解説します。
購入型クラウドファンディング
購入型クラウドファンディングは、起案者が支援者に対して商品やサービスなどのリターンを提供します。
たとえば子供用の化粧品を製品化するためのクラウドファンディングがあるとするなら、支援者には完成した子供用の化粧品がリターンとして送られます。
購入型クラウドファンディングは新商品の市場テストとして活用できたり、初期投資のリスクを軽減できるのがメリットです。
寄付型クラウドファンディング
寄付型クラウドファンディングは、名前の通り支援者からの寄付を募るクラウドファンディングです。
寄付なのでリターンは『お礼のメール』などが多く、商品やサービスは基本的にありません。地震などの被害が起こった時に、被災地支援のプロジェクトが立ち上がることもあります。
寄付型クラウドファンディングを活用することで、個人でも寄付を集めることができます。
融資(投資)型クラウドファンディング
融資(投資)型クラウドファンディングは、プロジェクトの資金を集めるために、複数の個人投資家から借り入れを行う仕組みのクラウドファンディングです。
日本ではソーシャルレンディングとも呼ばれ、投資商品のひとつとなっています。
支援者へのリターンは金銭になるため、「金融商品取引法」や「貸金業法」などの規制を受けるのが特徴です。
起案者側は銀行融資に比べて手続きが簡単で、迅速に資金調達をできるメリットがある反面、支援者側は不健全な運用を行っている企業に融資してしまう危険性もあり、金融庁が注意喚起を行っています。
その他のクラウドファンディング
上記の基本3種類以外にも、下記のような種類のクラウドファンディングもあります。
- 株式投資型クラウドファンディング
- 不動産投資型クラウドファンディング
- ふるさと納税型クラウドファンディング
- ファンド型クラウドファンディング
それぞれ違いを見ていきましょう。
株式投資型クラウドファンディング
株式投資型クラウドファンディングとは、企業が非上場株式を発行し、不特定多数の投資家から少しずつ資金を調達する仕組みのクラウドファンディングです。
ただし、株式の発行・購入金額には下記の制限があります。
発行・購入金額上限 | |
---|---|
借り手企業 | 1億円未満/年 |
投資家 | 50万円/社 |
出資者は未公開株の株主となり、配当金を受け取ることができます。
企業にとっては新たな資金調達の手段であり、知名度の向上やコミュニティの形成に役立つことがメリットです。
不動産投資型クラウドファンディング
不動産投資型クラウドファンディングとは、不動産購入に必要な資金を複数の投資家から集め、その運用利益を分配する形式のクラウドファンディングです。
必要な資金が集まると、不動産を購入し運用が始まります。
投資対象はマンションだけでなく商業施設や学校、ホテルなどもあり、人気のファンドだと数十秒で受付が終了するケースもあるほどです。
少額からの投資ができたり、分散投資ができることがメリットですが、あくまでも投資なのでリスクを伴うことには注意が必要です。
ふるさと納税型クラウドファンディング
ふるさと納税型クラウドファンディングは、自治体などが起案者となり『ふるさと納税』制度を活用して資金を調達する新しい手法です。
この方式では、従来のふるさと納税と同様に返礼品を受け取ることができ、所得税や住民税の控除も適用されます。
ふるさと納税型クラウドファンディングが従来のふるさと納税と違うのは、寄付者が使い道を選択した上で寄付をするので、寄付金が何に使われるかが明確なことです。
ふるさと納税と仕組みは同じですが、より直接的に意思を届けることができるのが、ふるさと納税型クラウドファンディングのメリットです。
ファンド型クラウドファンディング
不特定多数の投資家から資金を募り、ファンドとして投資を行う形態のクラウドファンディングがファンド型と呼ばれるものです。この方式では、投資家はファンドを通じて複数の企業へ投資することになります。
融資型クラウドファンディングとよく似ていますが、以下のような違いがあります。
投資先 | 投資先の選定 | リターン | リスク | |
---|---|---|---|---|
ファンド型 | ファンドを介した複数の企業 | ファンドマネージャーが行う | 低 | 低 |
融資型 | ひとつの企業 | 投資家が行う | 高 | 高 |
クラウドファンディングの方式には、それぞれ異なる特徴があります。寄付型は資金調達が比較的容易ですが、リターンがないため支援者の動機が不確実です。
購入型では、製品やサービスを提供しながら資金を調達できるため、顧客のフィードバックを得る機会がありますが、リターンの履行に対する責任が生じます。
投資型は高額な資金調達が可能ですが、投資者に対してリターンを約束するため、プロジェクトの成功が重要であり、法的な規制もクリアしなければなりません。それぞれ異なるリスクとリターンがあるため、活用する際には十分な理解が必要です。
クラウドファンディングにはデメリットとリスクがある
クラウドファンディングは資金調達の有力な手段ですが、成功の保証がなく「失敗したらどうしよう」と不安になるかもしれません。
実際に下記のようなデメリットやリスクもあります。
- 手数料がかかる
- 時間と労力がかかる
- プロジェクト失敗のリスク
- 知的財産のリスク
- 資金の誤用
- 法的リスク
- 遅延のリスク
これらのデメリットやリスクを理解し、適切に管理することがクラウドファンディングの成功には不可欠です。
そこでここからは、基本的なクラウドファンディング3種類『購入型』『寄付型』『融資(投資)型』のデメリットやリスクについて詳しく解説していきます。
購入型クラウドファンディングのデメリット・リスク
資金を調達するのに時間がかかる
購入型クラウドファンディングは資金調達に時間がかかることがデメリットです。
魅力的なプロジェクトページの制作や宣伝、支援者へのリターンの準備が必要なことに加え、募集期間なども考慮するとプロジェクト達成までに3〜5ヶ月程度を要します。また、クラウドファンディングプラットフォームによっては、支援金の入金タイミングが振込申請の翌月末日になることもあります。
余裕を持って資金調達の計画を立てることが重要です。
後からプロジェクトを中断・変更できない
変更前後で支援した人によって不公平が生じるため、プロジェクトを中断したり変更することは原則禁止です。
たとえば限定50個としていたプロジェクトが、支援が集まりそうだからといって途中で限定100個に増やしたら、最初に支援した人から不満が出るかもしれません。
プロジェクトに失敗すると返金!借金のリスクも…
クラウドファンディングには以下2つの方式があります。
内容 | リスク | |
---|---|---|
All or Nothing方式 | プロジェクトに失敗したら支援金は自動払い戻しされる | 支援金を1円も受け取れないリスクがある |
All in方式 | 目標金額に達していなくても支援金を受け取れる | 必ず手数料の支払いやリターンの提供が必要で、赤字のリスクがある |
『All or Nothing方式』と『All in方式』のどちらを選択しても、失敗すると借金を背負うリスクがあります。
資金面をすべてクラウドファンディング頼りにしてしまうのは危険です。
自分のアイデアを盗まれる危険性がある
最後のデメリットは、自分のアイデアを盗まれる危険性があることです。
クラウドファンディングでは、新しいアイデアを実現するために支援を集めているため、支援が集まる前にアイデアを盗むことも可能になります。
実際に自撮り棒つきスマホケース『SEICKBOX』作成のためのクラウドファンディング中に、中国のオンラインショップで類似商品が販売されることもありました。
アイデアの盗用を防ぐためには、『産業財産権』と呼ばれる4つの出願をしておくことが有効です。
- 特許権
- 実用新案権
- 意匠権
- 商標権
寄付型クラウドファンディングのデメリット・リスク
寄付型クラウドファンディングのデメリット・リスク
- 市場価値のリターンが見込めず支援者が集まりにくい
- 資金を使う理由を明確にする透明性が必要
リターンが見込めないため支援者が集まりにくい
寄付型クラウドファンディングは、支援者にとって市場価値のあるリターンがないため、支援者が集まりにくいデメリットがあります。
なぜならクラウドファンディングに支援をする人は、リターン目的の人も一定数いるためです。
寄付型クラウドファンディングを成功させるには、支援者に応援されるだけでなく、実行したいと思えるようなプロジェクトである必要があります。『誰が』に加えて『何を』行うかが重要になるのです。
資金を使う理由を明確にする透明性が必要
寄付型クラウドファンディングは資金用途を明確にする必要があります。
理由は、支援者が求めているのは支援したお金がきちんと使われることだからです。
たとえば被災者支援のクラウドファンディングなら、被災者のために使われているのかを気にしています。
活動報告を怠ったり、資金用途が不明確だったりすると、SNSで炎上するなどのリスクがあるので注意しましょう。
融資(投資)型クラウドファンディングのデメリット・リスク
融資(投資)型クラウドファンディングのデメリット・リスク
- 融資を受けられるテーマが限定的
- プロジェクトの内容によっては資金が集まらない
- 高金利の負担がかかる
- 担保が必要となるケースがある
- 事務作業が増える
融資を受けられるテーマが限定的
融資型クラウドファンディングは、融資を募れるテーマが限られています。
運営会社は、支援者からの投資金を企業の特定の事業に対して融資・貸付し、返済金の一部を支援者へのリターンとして支払う必要があります。
事業の内容が貸し倒れリスクの高いものだと、確実にリターンを支払うことができなくなるため、融資対象の事業は限られているのです。
プロジェクトの内容によっては資金がまったく集まらない
プロジェクトの内容によっては資金がまったく集まらないこともあります。
理由は、支援者の目的は金銭的なリターンであり、そのためにはプロジェクトの収益性が求められるからです。収益を見込めないプロジェクトでは投資してもらえません。
融資を受けるには、投資家に収益を得られる安全な投資先だと判断して貰う必要があります。
高金利の負担がかかる
融資型クラウドファンディングは、銀行融資よりも高金利になることが多いので、融資先企業にとっての金利負担が大きくなります。
なぜなら銀行と違い、融資型クラウドファンディングはリスクが高いので、投資家が高利を期待するからです。また、金融機関からの融資が難しい企業が融資型クラウドファンディングを利用する例が多く、貸し倒れリスクを考慮して金利が高くなっているという理由もあります。
融資型クラウドファンディングで資金調達する場合は、高金利の返済を見越し、余裕を持った返済計画を立てる必要があります。
担保が必要となるケースがある
融資型クラウドファンディングは一般的に高金利であることが多いため、返済できなくなる可能性を視野に入れて担保を設定するケースもあります。
具体的には2,000万円を借りるのに、2,000万円以上の価値のある土地を担保にしたりします。返済不能になると、担保を売却されるリスクがあるので気をつけましょう。
株主名簿の管理、決算の情報公開、配当などの事務作業が増加
投資型クラウドファンディングを利用すると、事務作業の負担が増えます。
具体的には下記です。
- 株主名簿の管理
- 決算の情報公開
- 配当
FUNDINNOのように、役員や株主に会計情報を共有する際の情報収集や資料作成のサポートなどを行っているサービスもあるので、上手に活用しましょう。
まとめ:デメリット・リスクをよく理解しておけば、クラウドファンディングは成功できる!
本記事では、クラウドファンディングに挑戦する際のデメリットやリスクについて解説しました。
プロジェクトを成功させるには、始める前にデメリットを理解しておくことが重要です。クラウドファンディングは上手に活用すれば、デメリットやリスクを上回るメリットがあります。
クラウドファンディングで大切なことは、複数の応援を集めることです。過去には『サッカーグラウンドをつくるプロジェクト』で3,000万円以上のお金を集めたプロジェクトもあります。
資金調達で悩んでるなら、本記事で説明したデメリットを理解し、ぜひクラウドファンディングに挑戦してみてください。
クラウドファンディングは、銀行融資に頼らず資金調達でき、広範な支持者を得る機会があります。また、商品の事前マーケティングやフィードバックを得る手段としても有効です。
しかし、目標金額に達しなければ資金を受け取れないリスクや、リターンの履行義務が発生し、負担が増える可能性があります。さらに、プロジェクトの失敗や期待に応えられなかった場合、支援者からの信用を失うリスクも伴います。
メリットだけでなく、デメリットやリスクを十分に理解した上で、クラウドファンディングを活用するようにしましょう。
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